メインナビゲーション

Main Navigation

【イベントレポート】第17回ステークホルダー会合を開催 ― フェアトレードを"特別な選択"から"日常の選択"へ

  • 28.07.26

2026.7.28 JICA地球ひろば(東京・市ヶ谷)

2026年7月28日(火)、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下、フェアトレード・ジャパン)は、JICA地球ひろば(東京・市ヶ谷)にて第17回ステークホルダー会合を開催しました。

本会合は、国際フェアトレード認証に関わる認証事業者・ライセンシーが一堂に会する場として、フェアトレード・ジャパンが毎年開催しているものです。国際基準や市場の最新動向、取組み事例を共有するとともに、企業・団体の垣根を越えて課題や実践知を共有し、フェアトレードの普及に向けた連携促進を目的として実施しています。

第17回となる今回の会合では、フェアトレード・ジャパンからの報告に加え、イオントップバリュ株式会社と株式会社トーホーによるパネルトークセッション、専門家による人権・環境デュー・ディリジェンスの特別解説、そして参加者同士のディスカッションと、盛りだくさんのプログラムとなりました。

「フェアトレードを"特別な選択"から"日常の選択"へ」――このテーマのもと、消費者との接点をどうつくるか、規制の潮流にどう向き合うか、そして産地への還元をどう可視化するか。市場づくりの実務と、これから求められる企業の責任の両面から、活発な意見交換が交わされました。

【開催概要】

  • 名称:第17回ステークホルダー会合
  • 開催日時:2026年7月28日(火)14:00~16:10(13:30 開場・受付開始)
  • 会場: JICA地球ひろば 国際会議場(JICA市ヶ谷ビル内)
  • 主催:認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン(フェアトレード・ジャパン)

【外部登壇者】

  • 水越 美登利 氏(イオントップバリュ株式会社 戦略本部 MD戦略部 環境推進グループ マネージャー)
  • 平松 達也 氏(株式会社トーホー コーヒー部 部長)
  • 塚田 智宏 氏(森・濱田松本法律事務所 弁護士)

フェアトレード・ジャパン報告・共有① サステナビリティ・フェアトレード市場の最新動向

発表者:フェアトレード・ジャパン 事務局長 潮崎 真惟子

 

冒頭、フェアトレードの最新インパクトデータの報告に加え、消費者・企業・政策の三つの視点から市場の最新動向を共有しました。

生産者に支払われたフェアトレード・プレミアムの2024年実績は約330億円であり、近年は気候変動への対応のための資金としての活用も広がっています。また、生産現場で多くの女性が活躍していること、認証産品の上位6品目では、半分近くがフェアトレード認証かつオーガニック認証として販売されていることなど、環境とジェンダーの両面でフェアトレードが役割を果たしている実態が示されました。あわせて、日本国内で得られたライセンス料の約37%がFairtrade Internationalの国際的な生産者支援の原資となっていることなど、資金の流れについても報告しました。

国内の活動報告としては、年間を通じて取り組んでいる生産者と企業との連携の取り組みに加え、消費者向けの施策として「ミリオンアクションキャンペーン」と「フェアトレードの環境月間」を紹介。若年層においてはフェアトレード認証ラベルの認知度が各種認証ラベルの中で1位、信頼度も高い水準にあることを報告しました。

政策動向としては、強制労働に関わる産品の輸入禁止措置(米国による追加関税の動きを含む)や、欧州における同様の規制の進展を取り上げました。さらに、根拠のない環境訴求を規制するいわゆる「グリーンウォッシュ規制」の広がりが、客観的な第三者認証である国際フェアトレード認証の活用を後押しする流れにつながっているという見立てを共有しました。

パネルトークセッション「フェアトレードを"特別な選択"から"日常の選択"へ」 ― イオンとトーホーに聞く、お客さま接点からの市場づくり ―

続くパネルトークセッションでは、外食産業向けの食材卸を担う株式会社トーホーの平松達也氏と、イオンのプライベートブランドを展開するイオントップバリュ株式会社の水越美登利氏をお迎えし、フェアトレード・ジャパン事務局長の潮崎真惟子がモデレーターを務めました。業態も顧客接点も異なる二社が、どのようにフェアトレードを「日常の選択」に近づけようとしているのかが語られました。

外食産業からの拡大 ― 株式会社トーホー

外食産業における国際フェアトレード認証コーヒーの拡大に向けた取り組みが紹介されました。同社は2035年までに、2025年比で国際フェアトレード認証コーヒーの調達量を1.5倍に拡大する目標を掲げています。取引先が一堂に会する展示商談会の場で国際フェアトレード認証コーヒーを提案するほか、自社のアンテナショップでも同コーヒーを取り扱うなど、事業者・消費者双方への接点づくりを進めています。

また、産地への現地視察にも継続的に取り組んでおり、新規産地の開拓や生産者組織との関係構築に加えて、フェアトレード・プレミアムが現地でどのように使われているかを自らの目で確認することを重視しているといいます。

市場環境については、原材料価格の上昇や円安が続くなかでも、インバウンドの回復と観光需要、ホテル業界を中心とした高単価帯の需要が伸びており、そこに国際フェアトレード認証コーヒーの提案余地があるとの見方が示されました。

会場からの「御社のフェアトレードコーヒーが選ばれる理由は何か」という問いに対し、観光業などを中心に提供価値そのものを高められること、そして企業のPR資産としても有効であることを挙げました。

お客さまの声から始まった20年 ― イオントップバリュ株式会社

2002年にお客さまの声を受けてフェアトレードへの取り組みを開始して以来の歩みが語られました。2004年には国内大手として初めてプライベートブランドでフェアトレード認証製品を発売し、2014年にはアジアで初めてフェアトレード調達プログラム(現在の国際フェアトレード原料調達ラベル、いわゆる「白ラベル」)に参画。取扱商品数は現在30点以上に拡大し、2025年にはフェアトレード認証の花の販売も開始しました。

特に強調されたのが、「お手頃価格の実現」への向き合い方です。計画生産と全量買い取りによって生産者側の安定性を確保しつつ、流通における中間コストを削減することで、お客さまが手に取りやすい価格を実現する。「原料調達の部分からサプライチェーン全体を計画する」という言葉に、その考え方が凝縮されていました。

一方で課題として挙げられたのが、消費者理解の深さです。フェアトレードという言葉の認知度は高いものの、その中身まで詳しく知っている人は、学生を含めてまだ多くはありません。認証業界では一般的なスキームであるものの、消費者にはまだあまり認知されていないマスバランス方式の考え方や、製品ラベル(黒ラベル)と調達ラベル(白ラベル)の違いといった仕組みの部分を、かみ砕いて分かりやすく伝え、価値そのものを理解してもらう努力が欠かせない、と語られました。

「お客さまの声から始まった取り組みとのことだが、現在の反応はどうか」という会場からの問いに対し、フェアトレード商品そのものに対して評価の声が寄せられていることが共有されました。

フェアトレード・ジャパン報告・共有② 国際フェアトレード認証基準の改定と実務対応の解説

発表者:フェアトレード・ジャパン 認証マネージャー 等々力 恵理
    フェアトレード・ジャパン ライセンスマネージャー 戸嶋悦子

国内外の規制動向を踏まえた国際フェアトレード基準の改定と認証ラベル使用ガイドラインの変更について解説しました。

トレーダー基準v3.0への改定では、発展項目(VBP)を廃止して要求事項を統合し、人権・環境デュー・ディリジェンスの実用化や環境への取組みの義務化など実務に即した運用へ移行しました。一方、認証ラベル使用ガイドラインの改訂では、EUのグリーンウォッシング規制(EmpCo指令等)に対応し、消費者の誤認防止と信頼性向上のため、パッケージ上の説明文の見直しやラベル使用に関する事前申請手続きの徹底を求めています。

特別解説:人権・環境デュー・ディリジェンスについて

解説:塚田智宏弁護士(森・濱田松本法律事務所)

森・濱田松本法律事務所の塚田智宏弁護士より、人権・環境デュー・ディリジェンス(HREDD)について特別解説をいただきました。

「国連指導原則」を起点に、企業のサプライチェーンにおける人権への取り組みが、これまでのCSR=自主的な取り組みという位置づけから、法的責任を伴うものへと大きく変化した潮流が示されました。そのうえで、これまで単に情報を「開示」することを求める法律が主流な時代もあったが、DD義務を課す法律や、環境破壊・人権侵害製品の輸入を差し止める法律が登場してきており、DDの取組を進めることが重要であると塚田弁護士は強調しました。実際に、近時、欧米だけでなく、インドネシアやスリランカをはじめ少なくない新興国においても強制労働製品の輸入禁止に関する法令の導入が報道されていることが紹介されました。

実務上の論点として挙げられたのが、リスク調査の実効性をめぐって「取引先からの回答をそのまま信じてよいのか」という問いかけです。(全ての回答の信頼性をチェックすることは実務上困難であるという前提の下でも)重要なリスクに係る回答についてはエビデンスを求めるべき場合がある一方で、そもそもアンケートが「強制労働はありますか?」というような表層的なものである場合には、「問題なし」という回答を信じることは難しく、質問の仕方そのものを見直し、実効性のある質問票を配布する必要がある、と解説されました。

また、苦情処理メカニズム(グリーバンス・メカニズム)の重要性にも言及されました。その構築の方法については、外部団体の提供する苦情処理メカニズムに加入することも選択肢であるが、そもそもメカニズムの構築やメカニズムへの加入に多くのコストをかけることが難しい場合には、大がかりな仕組みを初めから構築することを考えるのではなく、まずは受付用のメールアドレスを一つ用意し、それをサプライヤーの労働者に周知してもらうことを通じて実質的に機能する苦情処理メカニズムを構築することも可能である――という具体的な示唆に、多くの参加者が耳を傾けていました。

さらに、塚田弁護士は、環境・人権DDの負担が末端の中小企業や農家に偏る場合にはサプライチェーン全体でのDDの取組自体が十分に機能しなくなってしまうことを踏まえると、フェアトレード製品を導入することで、農家はプレミアムを受領することができ、また、バイヤー企業はフェアトレード認証の形で環境・人権配慮の取組が消費者からより認識されやすくなるといったベネフィットを通じて、環境・人権DDの取組自体の持続可能性を高められるという意味において、フェアトレード認証の果たす役割は大きいと指摘しました。

質疑応答・ディスカッション

最後は、参加者同士のグループディスカッションと全体共有の時間となりました。

あるグループからは、自社の社員食堂でフェアトレード製品を導入したところ好評だったという実践例が共有され、社内に取り組みを根づかせるうえでの社員教育の重要性が挙げられました。あわせて、「支払ったプレミアムがどのように産地へ還元されているのかを可視化していきたい」という声や、産地ツアーのような形で現場とつながる企画への関心、さらには「フェアトレード認証製品には関税上の優遇があるといった仕組みが将来的にできれば、取り組みを後押しできるのではないか」という提案も出されました。

別のグループからは、情報開示のあり方が論点として挙がりました。何を根拠として自社の取り組みを開示するのか、自社基準に依拠するのか、それとも第三者による基準を用いるのか。グリーンウォッシュ規制が強まるなかで、企業としての責任をどう果たしていくかという、まさに本会合の全体を貫くテーマに議論が及びました。

おわりに ― 「日常の選択」を支える基盤づくりへ

今回の会合を通じて浮かび上がったのは、フェアトレードの拡大が、消費者接点での「伝え方」と、サプライチェーンの「確かさ」という二つの軸で進んでいるということです。

イオントップバリュとトーホーの取り組みが示したのは、手に取りやすい商品と、分かりやすい説明があってはじめて、フェアトレードは"特別な選択"から"日常の選択"へと移っていくということでした。一方、基準改定とHREDDの解説が示したのは、その「日常の選択」を支えるためには、企業がリスクを直視し、実効性のある仕組みで裏づけていく必要があるということです。この二つは別々の課題ではなく、同じ一つの取り組みの表と裏にあたるものだといえます。

強制労働に関わる産品の輸入規制やグリーンウォッシュ規制が世界的に強まるなか、客観的な第三者認証としての国際フェアトレード認証が果たしうる役割は、これまで以上に大きくなっています。同時に、若年層における国際フェアトレード認証ラベルの高い認知度と信頼は、日本市場が次の段階へ進むための確かな追い風でもあります。

業種も立場も異なる企業・団体が一つの場に集い、それぞれの実践と課題を率直に持ち寄る。こうした対話の積み重ねこそが、フェアトレードを日本社会の「当たり前」にしていく原動力になります。フェアトレード・ジャパンは、今後もこうした場づくりを通じて、認証事業者・ライセンシーの皆さまとともに市場の拡大に取り組んでまいります。

ご参加いただいた皆さま、ご登壇いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

2026.07.28 JICA地球ひろば 国際会議場(JICA市ヶ谷ビル内)にて